「うちの子、SNSで何か困っているみたい……」
そう感じたとき、保護者がまず何をすべきか。結論から言うと、話を否定せず聞く→証拠を残す→サービスに通報・ブロック→必要なら学校や警察に相談という順番が基本です。
この記事では、トラブルが起きたときの対応手順だけでなく、低学年・高学年で変わる予防のポイント、そしてよくある質問まで、小学生のSNS対策を一通り網羅して整理しています。
先日、会社の後輩から「小学生の甥っ子がオンラインゲームのチャットで知らない人とやり取りしていたらしくて、義理の妹がパニックになっている」という相談を受けました。
話を聞いてみると、義理の妹さんは「すぐゲームを取り上げて怒鳴ってしまった」とのこと。その結果、甥っ子はそれ以降ゲームの話を一切しなくなってしまったそうです。
この話を聞いて、対応の「順番」を間違えると、むしろ子どもが親に相談しづらくなってしまうのだと痛感しました。今回はこうした実例も踏まえて、できるだけ具体的に書いていきます。
小学生のSNSトラブルはどれくらい起きているのか
まず数字を見てみます。
こども家庭庁が2026年2月に公表した「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」の速報(こども家庭庁公式サイト:cfa.go.jp/該当ページ https://www.cfa.go.jp/policies/youth-kankyou/internet_research/results-etc/r07 で確認可能)によると、10歳以上の小学生のうち、スマートフォンを自分専用で持っている割合は74.9%にのぼります。
中学生になると95.4%、高校生では99.1%と、学年が上がるほど専用率はさらに上がっていきます。
利用内容を見ると、小学生(10歳以上)では「動画視聴」が88.8%、「ゲーム」が85.5%で上位を占めています。1日あたりの平均インターネット利用時間は233.6分(約3時間54分)、前年度より約10分増加しており、3割以上の子が「勉強・学習」以外の目的にも長く時間を使っている実態がうかがえます。
正直、この数字を見たとき「思っていたより多いな」と感じました。自分が小学生だった頃はi-modeでメールを打つのがせいぜいでしたが、今の小学生はもう立派なネット利用者なんですよね。
そして見過ごせないのが、警察庁が2026年2月に公表した「令和7年における少年非行及び子供の性被害の状況について」(警察庁公式サイト:npa.go.jpで公表資料を確認可能)に記載された数字です。
令和7年中にSNSに起因する事犯の被害にあった児童(18歳未満)の数は1,566人で、前年比5.4%増加しています。この数値は、令和元年の2,082人をピークに一度減少したものの、近年また高水準で推移している数字だと各都道府県警の広報でも説明されています。
「うちの子は大丈夫」と思っていても、誰にでも起こりうる話だということが、この数字からも分かります。
小学生に起きやすいSNSトラブルとは?具体的な事例
「SNSトラブル」と一口に言っても、内容はさまざまです。代表的なものを整理します。
- メッセージの誤解による友達とのケンカ(「?」の有無だけで意味が変わってしまうなど)
- グループチャットでの仲間外れ・悪口のエスカレート
- 悪ふざけの動画・画像投稿による炎上
- 無料ゲームの意図しない高額課金
- 見知らぬ大人との接触(グルーミング)
- SNSに載せた写真からの個人情報流出・ストーカー被害
- キャラクター画像などの無断アップロードによる著作権侵害
特に注意したいのが「グルーミング」です。これは、子どもを狙う大人が趣味の話などで共感を示しながら少しずつ距離を縮め、信頼関係を築いていく手口を指します。
オンラインゲームで同じチームになった、SNSで優しくしてくれた——そんなきっかけから相手を「自分と年齢の近い子ども」と思い込んでしまい、実は大人だった、という事例が実際に起きています。
こうした被害の実例として、警察の広報資料では、SNSで知り合った相手に日頃の悩みを相談していたところ、優しい言葉で誘い出され、そのまま自宅に連れ込まれてしまったケースが紹介されています。
また、交際相手からプライベートな画像を要求され、断ると別れを迫られて送ってしまい、後日その画像を無断で拡散されてしまったという事例も報告されています。いずれも、最初は「仲良くなれた」という前向きな気持ちから始まっているのが特徴です。
先ほどの後輩の甥っ子のケースも、最初はオンラインゲームのチャットで趣味の話をしていただけだったそうです。悪意のある相手かどうかは、大人が見ても最初は判断がつきにくいのが実情だと感じます。
実際にトラブルが起きたとき、保護者が取るべき対応手順
ここが今回いちばん伝えたいところです。子どもがSNSトラブルに巻き込まれたと分かったとき、保護者はどう動けばいいのでしょうか。
1. まず話をさえぎらず、最後まで聞く
トラブルの内容を聞くとき、「なんでそんなことしたの」と先に責めてしまうと、子どもは以降のトラブルを隠すようになります。「教えてくれてありがとう」という姿勢で、何が起きたのかを落ち着いて聞き取ることが最優先です。
2. やり取りのスクリーンショットなど証拠を残す
悪口の書き込みや不審な人物からのメッセージは、削除される前にスクリーンショットで保存しておきます。これは学校や警察に相談する際の重要な材料になります。
3. 相手をブロックし、サービス側に通報する
多くのSNS・ゲームアプリには通報機能があります。悪質な書き込みや見知らぬ大人からの接触があった場合は、迷わずブロック・通報を行いましょう。
4. 内容に応じて学校・警察へ相談する
いじめに発展している場合は担任や学校のスクールカウンセラーへ、性被害や脅迫が絡む場合は警察(相談専用電話「#9110」)へ相談します。「これくらいで相談していいのか」とためらう必要はありません。
5. 端末の設定を見直す
トラブルの再発を防ぐため、フィルタリングやペアレンタルコントロールの設定を再確認します。次の見出しで詳しく説明します。
学年によって対応は変わる?低学年と高学年の違い
結論から言うと、低学年は保護者が仕組みで環境を守り、高学年は子どもと一緒にルールを話し合って決める——この切り替えが対応のカギになります。
小学生といっても、1年生と6年生ではSNSとの向き合い方がまったく違います。ここが今回、特にお伝えしたいポイントです。
低学年(1〜2年生)の場合
保護者が環境そのものを整えることが基本になります。カメラ機能の制限、アプリインストールの制限など、初期設定の段階でリスクを減らしておく必要があります。
写真や動画を撮った際に「共有しますか?」という確認画面が出て、意味を理解しないまま投稿してしまうケースもあるため、物理的な制限は特に重要です。
先ほどのこども家庭庁の調査でも、低年齢層の保護者の96.8%が何らかの方法でスマートフォン利用を管理していると回答しており、この年代は「見守る」より「制限する」対応が中心になっていることが分かります。
中学年・高学年(3〜6年生)の場合
子ども自身で判断する場面が増え、保護者の目が届きにくくなります。この時期は「画像や動画を投稿する前に必ず保護者が内容を確認する」「友達が写っている画像は本人と保護者の確認が取れるまで投稿しない」といった、情報発信に関する具体的なルールを一緒に決めておくことが有効です。
また、SNSやゲームで知り合った相手とは「絶対に会わない」というルールも、この年代では特に徹底しておきたいポイントです。
同じ調査では、10歳以上の小学生の保護者の85.8%が何らかのネット利用管理を行っている一方、フィルタリングを使っている割合は49.2%にとどまっています。低年齢層(未就学〜9歳)の保護者のフィルタリング利用が48.7%なのに対し、高学年に近づくにつれ「本人の判断に任せる」方向に管理の中身が変わっていく傾向が見て取れます。
つまり、低学年は「親が管理する仕組みづくり」、高学年は「本人と一緒に決めるルールづくり」——この切り替えを意識することが、学年別対応のカギだと考えます。
トラブルを未然に防ぐには?家庭でできる3つの対策
対応手順と並んで大事なのが「そもそも起きにくくする」予防策です。政府広報オンラインでは、保護者ができる対策として次の3つが紹介されています。
- ペアレンタルコントロールを活用する:ゲームのプレイ時間や課金、利用アプリを保護者のスマホから管理できる仕組みです。
- フィルタリングを利用する:出会い系サイトやアダルトサイトなど、不適切な情報へのアクセスを制限します。携帯電話会社では18歳未満の利用者に対してフィルタリングの説明・設定を行っています。
- 親子でルールをつくる:保護者が一方的に決めるのではなく、子どもと一緒に話し合って決めることがポイントです。
ルールの具体例としては、次のようなものが挙げられています。
- 名前や顔写真、学校名などは書き込まない
- 友達にメールやメッセージのやり取りを強要しない
- 利用する場所や時間を決める
- パスワードは親が管理する
- トラブルのときはすぐに保護者に相談する
こうした基本のルールは、正直「当たり前」に見えるかもしれません。ですが、実際に子どもと一緒に一つずつ確認している家庭は意外と少ない印象があります。
こども家庭庁の調査でも、家庭でルールを決めている割合は、小学生と保護者の間で認識のズレが見られます。小学生本人が「ルールを決めている」と答えた割合は83.8%である一方、保護者側の回答は88.4%と、わずかながら差があります。
学校種が上がるほどこのギャップは広がる傾向にあり、ルールは作って終わりではなく、成長に合わせて親子で確認し直していくものだと考えます。
保護者が知っておきたい、その他のトラブルパターン
見落とされがちですが、次のようなトラブルも小学生の間で起きています。
- 無料ゲームでの意図しない高額課金(保護者のクレジットカード情報が登録されたまま子どもが決済してしまう)
- ワンクリック詐欺(性的な画像などを誤ってクリックし、料金を請求される)
- 「高額バイト」「即日即金」などの文言でSNS上で募集される、いわゆる闇バイトへの加担リスク
こうした金銭トラブルや犯罪加担のリスクは、子ども自身に「悪いこと」という自覚がないまま巻き込まれやすいのが特徴です。
ゲーム内課金は事前に上限設定をしておく、SNSで「簡単に稼げる」といった誘い文句を見たら必ず保護者に相談する、というルールを普段から伝えておくとよいでしょう。
よくある質問
Q. 子どもがSNSトラブルを隠している気がします。どう聞き出せばいいですか?
問い詰めるのではなく、「困ったことがあったら怒らないから教えてね」と日頃から伝えておくことが有効です。信頼関係があれば、トラブルが深刻化する前に相談してもらいやすくなります。
Q. 小学生はSNSアカウントを持ってはいけないのですか?
インスタグラム、X、YouTube、TikTokなどの主要SNSには年齢制限があり、多くは12歳以下でのアカウント作成が認められていません。小学生のうちは、保護者が代わりに管理する形での利用にとどめるのが安全です。
Q. トラブルの相談先はSNS運営会社以外にもありますか?
いじめや誹謗中傷は学校、性被害や脅迫が絡む場合は警察相談専用電話「#9110」、インターネット上の人権侵害は法務省の窓口が相談先になります。内容に応じて使い分けましょう。
考察:SNSトラブルは「起きた後」より「起きる前」の関係づくりがカギ
ここからは筆者としての考えを書きます。
今回、複数の公的機関の統計を見て感じたのは、SNSトラブルの対策として挙げられている内容が、フィルタリングやルールといった「仕組み」以上に、「親子の信頼関係」に集約されているという点です。
どれだけ厳しいルールを作っても、子どもが「相談すると怒られる」と感じていれば、隠れて使ったり、トラブルを一人で抱え込んだりしてしまいます。
逆に、「何かあったら必ず助けてくれる」という安心感があれば、深刻化する前に相談してもらえる可能性が高くなる——これは今回参照した資料に共通して見られた傾向で、筆者としても最も重要な指摘だと考えます。
冒頭で紹介した後輩の甥っ子のケースも、まさにこのパターンでした。ゲームを取り上げて叱るという対応自体は、保護者としてはごく自然な反応だと思います。ただ、結果として子どもが「もう話さない方がいい」と学習してしまったのだとすれば、それは望ましくない結末です。
また、令和7年のSNS起因犯罪被害が1,566人で前年比5.4%増加という数字は、実際に事件化したケースに限られており、表に出ていない「ヒヤリハット」はさらに多いと考えられます。
先ほど紹介した「悩みを相談していたら優しく誘い出された」という事例のように、被害は必ずしも見知らぬ相手からいきなり始まるわけではなく、日常的な会話の延長線上で少しずつ距離が縮まっていくケースが多いようです。
子どもが「怖い思いをしたけど誰にも言わなかった」という経験を持たないようにするためにも、日頃の会話の中で「何か困ったことはない?」と軽く聞く習慣を持つことが、遠回りに見えて一番の予防策になるのではないでしょうか。
個人的には、ペアレンタルコントロールやフィルタリングといった技術的な対策は「土台」であって、それだけでは不十分だとも感じています。子ども自身が「なぜこのルールがあるのか」を理解していなければ、成長とともに制限が形骸化してしまうからです。
技術的な制限と、対話を通じた納得感のあるルールづくりを、学年に合わせて両輪で進めることが、今後さらに重要になっていくと見ています。
まとめ
小学生のSNSトラブルには、友達との誤解や仲間外れ、悪ふざけ動画の炎上、見知らぬ大人とのグルーミング被害、高額課金など、さまざまなパターンがあります。
トラブルが起きたときは、話を否定せず聞く、証拠を残す、サービスに通報・ブロックする、必要に応じて学校や警察に相談する、という順番で対応することが基本です。
そして、低学年のうちは保護者が仕組みで守り、高学年になるにつれて親子で話し合いながらルールを決めていく——この学年に応じた対応の切り替えが、トラブルを未然に防ぐ一番の近道だと言えます。
なお、記事内の各種統計は2026年7月時点で公表されている調査結果をもとに作成しています。最新の数値や詳細は、こども家庭庁・警察庁の公式サイトもあわせてご確認ください。

