結論から言うと、警察庁の令和3年統計では、SNSがきっかけで被害に遭った児童は1,812人にのぼり、その被害のきっかけとなった投稿の多くは、危険な内容ではなく「日常の自己紹介」だったことが分かっています。
「うちの子は変な投稿をしていないから大丈夫」と思っていても、実は誰でも被害に遭う可能性があるということです。
この記事では、令和3年の警察庁データと、令和4年度のこども家庭庁調査という、時期の異なる2つの公的統計を組み合わせて、中学生のSNS利用の実態とトラブルの原因、そして家庭でできる対策を整理していきます。
数字を見るときに「いつの何のデータか」が混ざらないよう、それぞれの数値には調査年をそのつど添えて書いていきます。
同世代の子どもを持つ身として、この数字を見たときは正直「ここまで多いのか」と驚きました。
中学生はどのSNSを使っている?トラブルの入り口はどこにあるのか
中学生の間で使われているSNSは一つではありません。
短文投稿でゆるくつながれるX(旧Twitter)、写真や動画を加工して共有できるInstagram、短尺動画が中心のTikTok、ライブ配信や投げ銭機能を持つミクチャ(MixChannel)、そして連絡手段として事実上必須になっているLINEなど、種類は多岐にわたります。
友人同士の連絡はLINEだけでなく、X(旧Twitter)やInstagramのダイレクトメッセージ(DM)でやり取りされることも多いと言われています。
ここで見落とされがちなのが、これらのSNSにはもともと年齢制限が設けられているという点です。
X(旧Twitter)やInstagram、TikTokなど多くのSNSは、利用規約上「13歳以上」でなければアカウントを作れません。
LINEもiOS版の利用推奨年齢は12歳以上とされ、18歳未満の利用者はID検索機能が使えないという制限がかかっています。
つまり中学生の利用自体は規約の範囲内であることが多いのですが、「年齢確認の仕組みが自己申告に近い」ため、実際には誰でも簡単にアカウントを作れてしまうのが実情です。
ここに、中学生のSNSトラブルの入り口があると筆者は考えます。
中学生のSNS利用率はどれくらい?(こども家庭庁・令和4年度調査)
こども家庭庁(2023年に内閣府の子ども関連施策の一部業務を移管して新設された行政組織)が公表した「青少年のインターネット利用環境実態調査」(令和4年度調査)によると、中学生の78.9%がスマートフォンを利用しており、そのうち91%が「自分専用の端末を使っている」と回答しています。
つまり、令和4年度時点で中学生の8割近くがスマホを持ち、そのほとんどが自分専用機でSNSやインターネットに自由にアクセスできる環境にあるということです。
この数字だけを見ると「持たせるのが当たり前」に感じるかもしれませんが、同じ令和4年度調査に付随するデータでは、インターネット上のトラブルに関連する経験として「迷惑メッセージやメールが送られてきたことがある」が18.6%、「インターネットで知り合った人とメッセージやメールなどのやりとりをしたことがある」が16.9%という結果も出ています。
令和4年度調査の中だけで見ても、利用率の高さと、トラブル経験の割合の高さは、いわば表裏一体の関係にあると言えるでしょう。
筆者自身、子どもがスマホを持ち始めたときに、どのアプリを入れているか一緒に画面を見せてもらったことがあります。
正直なところ、LINEだけでなくInstagramのアカウントも作っていたことに驚きました。
「友達がみんな使っているから」という理由で、いつの間にかSNSの利用が広がっていくのは、多くの家庭で起きていることだと思います。
そのとき初めて、フォロワーの中に一度も会ったことのない相手がいることに気づき、親としてどこまで介入していいのか悩んだ記憶があります。
中学生のSNSトラブル実例|警察庁・令和3年統計で見る被害の中身
具体的にどのようなトラブルが起きているのか、令和3年の警察庁データをもとに実例で整理します。
- SNSを通じたいじめ(仲間外れ、悪口の拡散)や、逆にいじめに加担してしまうケース
- 投稿や写真から個人情報が特定・流出してしまうケース
- 自分の投稿が意図せず炎上してしまうケース
- 他者への誹謗中傷を書き込んでしまうケース
- だまされたり脅されたりして自分の裸の写真を送らされる「自画撮り被害」
- アカウントを乗っ取られる
- SNSで知り合った相手と実際に会い、つきまとい被害や性的被害に遭う
これらは「特別な子どもだけに起きること」ではありません。
総務省や警察庁が公表しているインターネットトラブル事例集でも、ごく普通の日常のやり取りの延長線上で被害が発生していることが繰り返し指摘されています。
特に自画撮り被害や性的被害については、警察庁の令和3年統計で児童ポルノ事犯の被害児童数が2,969人(前年から増加傾向)にのぼり、そのうち「児童が自らを撮影した画像に伴う被害」が全体の35.3%を占めるという結果が出ています。
これは、だまされたり脅されたりして自分の裸体を撮影させられ、送信してしまう被害のことです。
数字として見ると、決して他人事とは言えないレベルだと筆者は感じます。
なぜSNSで知らない人とつながると危険なのか(警察庁・令和3年統計)
警察庁の令和3年統計によると、SNSに起因する事犯のうち被害児童と被疑者が最初に知り合うきっかけとなった投稿は、72.6%が「被害児童自身の投稿」からだったことが分かっています。
投稿内容の内訳を見ると、「プロフィールのみ」「趣味・嗜好」「日常生活」「友達募集」といった、一見ごく普通の投稿が全体の約半数(49.7%)を占めています。
つまり、危険な投稿をしたつもりがなくても、日常的な自己紹介や趣味の投稿がきっかけで、見知らぬ相手とつながってしまうケースが大半だということです。
また、被害児童と被疑者が知り合ったサイト・アプリの内訳では、令和3年時点で「Twitter(現X)」が36.9%と最多で、Instagram、Yay!、KoeTomoといったサービスも前年より増加傾向にあると報告されています。
この2つのアプリの特徴は、次のようにまとめられます。
- Yay!:匿名で参加できる音声・チャット中心のコミュニティアプリ。共通の趣味を持つ人同士がグループで交流できる
- KoeTomo:見知らぬ相手と音声通話でつながれるアプリ。「知らない人と気軽に話せる」ことを売りにしている
いずれも匿名性の高さゆえに相手の素性が分からないまま関係が深まりやすく、利用する場合は特に注意が必要だと筆者は考えます。
不特定多数と気軽につながれるという、SNS本来の便利さそのものが、そのままリスクの構造になっている。
この点は、保護者が最も理解しておくべきポイントだと筆者は考えます。
データで見る中学生のSNS被害(令和3年・令和4年度まとめ)
ここまでの数値を、調査年ごとに整理しておきます。
- 【令和3年・警察庁】SNSに起因する被害児童数:1,812人
- 【令和3年・警察庁】児童ポルノ事犯の被害児童数:2,969人(うち自画撮り被害35.3%)
- 【令和3年・警察庁】知り合うきっかけが被害児童自身の投稿:72.6%(うち日常的な投稿が49.7%)
- 【令和3年・警察庁】知り合ったサービスでTwitter(現X):36.9%(最多)
- 【令和4年度・こども家庭庁】中学生のスマホ利用率:78.9%(うち自分専用端末91%)
- 【令和4年度・こども家庭庁】インターネットで知り合った人とやり取りした経験:16.9%
こうして並べてみると、令和3年の警察庁データが「実際に起きた被害の内訳」を、令和4年度のこども家庭庁調査が「その背景にある利用実態」を示していることが分かります。
2つの調査を重ねて読むことで、単独のデータだけでは見えにくい全体像がつかみやすくなります。
中学生のSNSトラブルの原因と、親ができる対策
では、こうしたトラブルが起きる原因はどこにあり、保護者はどう向き合えばよいのでしょうか。
原因として大きいのは、前述の通り「危険な投稿ではなく、日常的な自己紹介がきっかけになりやすい」という点と、「年齢確認の仕組みが自己申告に近く、実質的に誰でもアカウントを作れる」という2つの構造的な問題です。
対策としてまず大切なのは、日頃からのコミュニケーションです。
SNSで何かトラブルに巻き込まれかけていても、保護者に相談できずに被害が深刻化するケースが少なくないと指摘されています。
子どもがSNSのアカウントを作ったら、投稿内容を一緒に確認したり、気になることがあれば自然に話題にできる雰囲気を普段から作っておくことが重要です。
次に、スマホを持たせる前の「ルール作り」も欠かせません。
押しつけではなく、子どもと一緒に話し合って決めることがポイントです。
- 実際に会ったことのない人とはやり取りをしない
- 個人が特定できる情報(学校名・制服・自宅周辺の写真など)は投稿しない
- 困ったことがあったらすぐに相談する
こうしたルールに加えて、フィルタリングサービスやペアレンタルコントロール機能を活用するのも有効な対策の一つです。
iPhoneの「スクリーンタイム」やAndroidの「ファミリーリンク」を使えば、利用時間の制限やアプリの使用状況の確認ができます。
一方で見過ごせないデータもあります。
警視庁生活安全部少年育成課の分析(令和3年)によると、SNSに起因する事犯の被害児童のうち、フィルタリングの利用有無が判明したケースでは「約8割が被害時にフィルタリングを利用していなかった」とされています。
ルールを決めるだけでなく、機能面でのサポートも組み合わせることが、被害を防ぐうえで現実的に効果があると言えそうです。
考察:中学生とSNSの距離感、世界の規制動向から見えてくること
ここからは筆者としての見方を書きます。
SNSの普及はここ10年ほどの出来事で、スマホ普及からもまだ日が浅いのが実情です。
だからこそ「中学生にどこまでSNSを許すべきか」という問いに、社会全体としてまだ明確な正解が確立されていないというのが率直なところだと感じています。
この点で参考になるのが、海外の年齢規制の動きです。
オーストラリアでは2025年12月10日、16歳未満のSNS利用を禁止する世界初の法律が施行されました。
対象はFacebook、Instagram、YouTube、TikTok、Snapchat、X(旧Twitter)など主要10社で、事業者側に「合理的な年齢確認措置」を義務付け、違反した企業には最大約51億円の罰金が科される仕組みです。
一方でEU(欧州連合)は、国として一律禁止するのではなく、デジタルサービス法(DSA)にもとづき、SNS事業者に未成年アカウントの初期設定を非公開にすることや、のめり込ませる設計を初期設定でオフにすることなどを求める方向で進んでいます。
欧州委員会は2025年7月、個人情報を渡さずに年齢だけを確認できるプライバシー配慮型の年齢確認アプリのプロトタイプを公表し、フランスやイタリアなど一部の国で先行導入を進めています。
日本の中学生を取り巻く状況と単純比較はできませんが、「事業者側に年齢確認の実効性を持たせる」という方向性は、日本の対策を考えるうえでも参考になる視点だと筆者は感じています。
というのも、警察庁のデータが示すように、被害のきっかけの多くは「悪意のある投稿」ではなく、ごく普通の自己紹介や日常の投稿だったという点が重要だからです。
これは、家庭でのフィルタリングやルール作りだけでは防ぎきれない領域があることを意味しています。
もう一つ気になるのは、警察庁の令和3年統計で、SNSに起因する重要犯罪等(略取誘拐など)の被害児童数が前年の20人から31人へと増加傾向にあると報告されている点です。
全体の被害児童数はほぼ横ばいでも、より深刻な犯罪の割合が増えているとすれば、対策の優先順位も見直していく必要があるのではないかと筆者は考えています。
今後は、オーストラリアやEUのような事業者側の年齢確認の仕組み強化に加えて、学校教育の中での情報モラル教育の充実が、家庭でのルール作りと並行して求められていくだろうと見ています。
家庭・学校・プラットフォーム側、それぞれの対策が噛み合って初めて、リスクは下がっていくはずです。
まとめ
中学生の間でSNSはすでに生活の一部になっており、利用そのものを完全に避けることは現実的ではありません。
一方で、SNSを通じたいじめ、個人情報の流出、自画撮り被害、見知らぬ相手とのトラブルなど、具体的なリスクが令和3年の警察庁統計や令和4年度のこども家庭庁調査でも裏付けられています。
危険なのは特別な投稿ではなく、日常的な自己紹介や趣味の投稿がきっかけになりやすいという点は、特に押さえておきたいポイントです。
日頃からの対話、家庭でのルール作り、フィルタリングなどの機能面での対策を組み合わせることで、リスクを下げることは十分に可能です。
まずは、お子さんがどんなSNSをどう使っているか、一度確認してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
よくある質問
中学生はSNSを何歳から使えますか?
X(旧Twitter)やInstagram、TikTokなど多くのSNSは利用規約上13歳以上とされています。LINEはiOS版で12歳以上を利用推奨年齢としていますが、18歳未満はID検索機能が制限されます。
中学生のSNSトラブルで一番多いのはどんな被害ですか?
警察庁の令和3年統計では、SNSを通じて知り合った相手との間で起きる被害のうち、被害児童自身の日常的な投稿がきっかけになるケースが7割超を占めています。いじめや個人情報流出のほか、自画撮り被害も報告件数が増加傾向にあります。
フィルタリングを設定していれば安心ですか?
フィルタリングは有効な対策の一つですが、警視庁の分析では被害児童の約8割が被害時にフィルタリングを利用していなかったというデータもあり、万能ではありません。ルール作りや日頃の会話と組み合わせることが大切です。
この記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。国内外の統計や規制動向は今後も更新される可能性があるため、最新情報は公式ヘルプや公的機関の発表もあわせて確認してください。

