結論から言うと、SNS炎上は「自分は投稿していないから関係ない」と思っている社会人ほど巻き込まれやすいトラブルです。
2023年に観測されたSNS炎上事件は189件。そのうち約4分の1が、SNS上ではなく日常の中での出来事をきっかけに起きています。
「炎上=SNSに投稿する人の問題」という思い込みが、実は一番のリスクになっている。今回はそのデータを、同世代の目線で整理していきます。
SNS炎上とは?2023年に189件観測された事実
SNS炎上とは、特定の投稿や出来事に対して批判的な言及や引用ポストが急増し、拡散が続いている状態のことを指します。
この記事のデータは、SNSマーケティングを手がける株式会社コムニコが2024年3月26日に公開した「2023年炎上レポート」(調査期間:2023年1月1日〜12月31日)をもとにしています。
同レポートによると、2023年の1年間で観測されたSNS炎上事件は189件でした。
炎上期間中に言及された関連キーワードの総数は1846万4813件にのぼり、前年2022年の1002万5819件から大幅に増えています。
平均炎上日数は22日で、鎮火まで長いケースでは約3か月かかった事例もあったとされています。
前年2022年は炎上件数そのものは247件と、2023年より多かったことが分かっています。
つまり、件数だけ見れば2023年は落ち着いたように見えるものの、1件あたりの言及数はむしろ跳ね上がっているわけです。
これは、件数が減っても、一つひとつの炎上がより拡散しやすく、注目されやすくなっていることを意味していると筆者は見ています。
回転ずし店などでの迷惑行為がメディアで繰り返し取り上げられていたことを、覚えている方も多いのではないでしょうか。
こうした事例への言及の多さが、2023年の総言及数を押し上げた一因と考えられます。
昔はテレビのニュースで見て終わっていたような出来事も、今はSNS上で何日も語られ続ける。同世代として、この変化はなんとなく実感がある人も多いはずです。
なぜ「投稿していない社会人」も炎上と無関係でいられないのか
結論として、SNSに一切投稿していない社会人でも、周囲の行動が撮影・共有されることで炎上の当事者になり得ます。
コムニコの調査では、炎上のきっかけとなった媒体別の内訳も示されています。
最も多かったのはX(旧Twitter)で89件(47.3%)でした。
匿名性が高く拡散力もあるため、SNS炎上の舞台になりやすい媒体だと分析されています。
ここで注目したいのが、Xに次いで多かった「オフライン」という区分です。
これは、店舗での行為や講演会での発言、屋外広告など、SNS以外の場所で起きた出来事が発端となり、SNS上で拡散・炎上したケースを指します。
2022年時点でのオフライン発の炎上は全体の8.6%(20件)でしたが、2023年には全体の26.1%(約49件)まで割合が拡大しています。
※このオフライン発の炎上(媒体別の分類)は、後述する「炎上ジャンル別ランキング」に出てくる「オフライン」というジャンル分類とは、集計の切り口が異なる別の数字です。混同しないよう、この記事では区別して扱います。
割合で見ると2022年から3倍以上に増えたことになり、企業がSNSアカウントを持っていなくても、無関係ではいられない状況が広がっていると読み取れます。
これは企業だけでなく、一個人である社会人にも当てはまる話です。
自分がSNSを一切使っていなくても、職場や外出先での言動が誰かに撮影され、それがSNS上で拡散されれば、意図せず炎上の当事者になる可能性があるということです。
筆者自身、以前デジタル関連の相談業務に携わっていた際、飲食業で働く40代の知人から「自分はSNSはやっていないのに、店での接客の様子を撮られた動画が広まって困っている」という趣旨の相談を受けたことがあります。
その時期はちょうど、外食チェーンでの迷惑行為がニュースで連日取り上げられていた頃で、店員の何気ない対応まで過剰に注目されやすい空気があったと記憶しています。
そのときに強く感じたのは、SNS対策は「投稿する人だけの問題」ではなく、「撮られる可能性がある人全員の問題」だということでした。
同世代の会社員の中には、SNSは若い人のものだと感じている方もいるかもしれません。
ですが、このデータを見る限り、SNSを使っていないことと、SNSのリスクと無関係でいられることは、もはやイコールではなくなっているといえます。
炎上ジャンル別ランキングから見える注意すべきポイント
コムニコの2023年調査では、炎上の原因となったジャンル別のランキングも公表されています。
ここでのジャンルは「災害」「差別」「思想」「宗教」「政治」「セクシャル」「操作ミス」「熱狂的アンチ」「巻き込まれ炎上」「モラル」「リテラシー」「オフライン」の12種類に分類されており、以下は観測件数が多かった上位のジャンルです。
| 順位 | 炎上ジャンル | 観測件数 | 平均炎上日数 |
|—|—|—|—|
| 1位 | リテラシー不足 | 117件 | 21日 |
| 2位 | 思想 | 51件 | 19日 |
| 2位 | オフライン(ジャンル分類) | 51件 | 18日 |
| 4位 | モラル(不祥事・スキャンダル) | 42件 | 29日 |
| 5位 | 政治 | 24件 | 25日 |
※この表は12ジャンル中の上位を抜粋したもので、件数の合計は総炎上件数189件とは一致しません。また表内の「オフライン(ジャンル分類)」は、前章で説明した「媒体別のオフライン」とは別の集計です。全ジャンルの内訳は原典のレポートをご確認ください。
最も件数が多かったのは、知識や配慮が不足した投稿による「リテラシー不足」で117件でした。
一方、注目すべきは「モラル」に関する炎上です。
件数自体は42件と4位ですが、平均炎上日数は29日と、集計された中で最も長期化しやすい傾向にありました。
コムニコの分析では、モラルに関する炎上はメディア報道と結びつきやすく、報道のたびにSNS上で話題が再燃しやすいことが、長期化の理由として挙げられています。
痴漢や盗撮の様子を無断で動画投稿する行為や、飲食店での不適切な行動などが、この「モラル」ジャンルの典型例とされています。
筆者としては、この点は特に社会人にとって重要な示唆だと考えています。
一時的な話題で終わらず、報道を通じて何度も蒸し返される点が、社会人にとっての信用に関わるリスクだと感じるからです。
一度信用を失うと、それを取り戻すまでに想像以上の時間がかかる可能性があるということを、この平均29日という数字は示していると言えるでしょう。
社会人が今日からできる炎上リスクとの向き合い方
ここまでのデータを踏まえると、社会人が意識しておきたいポイントは大きく3つに整理できます。
- 自分が投稿していなくても、職場や外出先での言動は撮影・共有される前提で行動する
- 迷惑行為や不適切な発言はもちろん、軽い気持ちの言動でも「モラル」ジャンルとして長期化しやすいと理解しておく
- 自分のSNSアカウントで他人の投稿を安易に拡散・引用する側にも、リテラシー不足による炎上のリスクがあることを忘れない
まずは自分自身のSNSの使い方を振り返り、拡散・引用する前に一呼吸置く習慣をつけることをおすすめします。
「知らなかった」では済まされないケースが増えている、というのがこのデータから読み取れる率直な印象です。
考察:社会人のSNS炎上リスクは「投稿」より「日常」にある
ここからは、これまでのデータを踏まえた筆者なりの考察です。
2023年の炎上調査が示す最大のポイントは、炎上の火種が「SNS上の投稿」だけでなく「オフラインでの行動」にまで広がっている点だと筆者は考えています。
オフライン発の炎上割合が2022年の8.6%から2023年の26.1%へと拡大した背景には、スマホでの撮影・共有がより日常的になったことがあると見られます。
個人的には、社会人にとってのSNSリスク対策は「投稿内容に気をつける」ことだけでなく、「日常の行動が撮影・共有される可能性を前提に振る舞う」という視点まで広げる必要があると感じています。
また、モラルに関する炎上が平均29日と長期化しやすいというデータは、社会人にとって特に重く受け止めるべき数字だと思います。
若い世代のSNSトラブルは知識不足がきっかけになりやすい一方、社会人のSNSトラブルは私生活の行動そのものが発端になりやすいという、質の違いがあるように見えるからです。
ここで一つ、視点を広げておきたいことがあります。
コムニコが公表している2024年版の炎上レポートでは、2024年のSNS炎上事件は168件とやや減少した一方で、ジャンル別では「政治」がはじめて首位になったことが分かっています。
同社の分析担当者は、選挙が多かったことに加え、企業による生成AIの活用が一般化した結果、生成AIで作られた広告などの画像や動画がネガティブな反応を集めて炎上するケースも見られたと述べています。
この流れを踏まえると、今後は「その場にいた人が撮った」だけでなく、「AIが作った映像や画像が誤解を招いて拡散される」というパターンの炎上も増えていく可能性があると筆者は見ています。
つまり、社会人にとっての炎上リスクは、今後さらに「自分の与り知らないところで発生する」方向に広がっていくと考えられます。
筆者としては、SNSの利用がますます生活や仕事に浸透していく中で、社会人世代も「自分は投稿していないから大丈夫」と過信せず、基本的なリテラシーと落ち着いた対応力を持ち続けることが、これまで以上に重要になっていくと考えています。
まとめ
2023年には189件のSNS炎上事件が観測され、そのうち26.1%はオフラインでの出来事が発端でした。
炎上ジャンル別ではリテラシー不足が最多である一方、モラルに関する炎上は平均29日と長期化しやすい傾向にあります。
自分が投稿していなくても、日常の行動が撮影・共有される前提で振る舞うことが、これからの社会人にとって現実的な備えになりそうです。
よくある質問
SNS炎上は社会人には関係ないですか?
いいえ、関係があります。
2023年の調査では、SNS炎上のきっかけの26.1%がオフラインでの出来事であり、SNSを積極的に使っていない社会人でも当事者になり得ることが分かっています。
モラルに関する炎上が長引きやすいのはなぜですか?
不祥事やスキャンダルはメディア報道と結びつきやすく、報道のたびにSNS上で話題が再燃しやすいためと考えられます。
2023年の調査では、モラルに関する炎上の平均炎上日数は29日と、他のジャンルと比べて長い結果になっています。
2024年以降もこの傾向は続きそうですか?
コムニコが公表した2024年版のレポートでは、炎上件数自体は168件とやや減った一方、政治関連やAI生成コンテンツをきっかけとした炎上が新たに目立ち始めています。
社会人にとっての炎上リスクは、今後も形を変えながら続いていく可能性が高いと考えられます。
