結論から言うと、学生のSNSトラブルは「ネットいじめ・誹謗中傷」「個人情報の流出」「炎上」「課金・詐欺」「自画撮り被害」「乗っ取り・なりすまし」「生成AI加工画像の拡散」の7パターンに整理でき、文部科学省の調査でもネット上のいじめ件数は年々増え続けています。
LINEやInstagram、TikTokは今や学生の生活に欠かせないツールですが、使い方を一歩間違えるだけで、誰でも加害者にも被害者にもなり得るのが今のSNSです。
この記事では、学生に多いSNSトラブルの具体的な7パターンと、実際に起きた事例、そして保護者や学生自身が気をつけたいポイントを、公的機関の最新データとあわせて整理して紹介します。
この記事でわかること
- 学生のSNSトラブル7パターンの具体的な内容
- 実際に起きた炎上事例やいじめの実態(出典つき)
- なぜ学生はSNSトラブルに巻き込まれやすいのか
- トラブルが起きたときの相談先と対応の順番
- 家庭でできる予防策
なお、この記事は2026年7月時点で確認できる公表データをもとに作成しています。統計や相談窓口の仕様は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトもあわせて確認してください。
学生のSNSトラブルとは?今どれくらい起きている?
学生のSNSトラブルとは、LINEやInstagram、X、TikTokなどを通じて起きる、いじめ・誹謗中傷・個人情報流出・詐欺・性被害などの総称です。
まず押さえておきたいのは、文部科学省が毎年公表している「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の数字です。
令和5年度の調査では、小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数は73万2,568件で過去最多となりました。
このうち「パソコンや携帯電話等でひぼう・中傷や嫌なことをされる」といった、いわゆるネットいじめの件数は24,678件で、前年度の23,920件からさらに増加しています。
高校生に限ると、冷やかしやからかいに次いで多いのが、このネットいじめだという結果も出ています。
これは全体のいじめ認知件数のうちの一部ですが、ネットを介したいじめだけで年間2万件を超えているという事実は、決して他人事ではありません。
また、東京都の相談窓口「こたエール」に寄せられた令和5年度の相談件数は1,859件で、このうち青少年本人・保護者・学校関係者からの相談が880件を占めました。
学職別の内訳は、小学生210件(24%)、中学生386件(44%)、高校生244件(28%)で、もっとも多かった相談内容は「ネットいじめ」(168件)でした。
相談件数自体は令和2年度以降のコロナ禍を境に増減がありますが、小学生からの相談割合が一定の水準を保っている点は見過ごせません。
つまりSNSトラブルは、もはや「一部の高校生・大学生だけの話」ではなく、小学生の家庭にとっても身近な問題になっているということです。
学生に多いSNSトラブル7パターンとは?
学生に多いSNSトラブルは、次の7パターンに整理できます。
- ネットいじめ・誹謗中傷:LINEグループでの無視や悪口、SNSでの中傷投稿など
- 個人情報の流出・特定:写真の背景や瞳への映り込みから住所や学校が特定される
- 迷惑行為の投稿による炎上:店舗や公共の場での不適切な行為をSNSに投稿
- ゲーム課金・詐欺サイトへの誘導:無料アプリから有料サイトへ誘導され高額請求
- 自画撮り被害・性的なトラブル:SNSで知り合った相手にだまされて画像を送ってしまう
- アカウントの乗っ取り、なりすまし:パスワード流出やフィッシングにより第三者に操作される
- 生成AIを使った悪質な加工画像の拡散:本人の写真を加工して事実と異なる形で広める行為
このうち、学校現場でもっとも多く報告されているのは、やはりネットいじめ・誹謗中傷です。
文字だけのやり取りは感情のニュアンスが伝わりにくく、ちょっとした一言が誤解を生みやすいという特徴があります。
言葉足らずな一言が、思わぬトラブルに発展しやすいという点は、学生のSNSトラブルを考えるうえで大事な視点です。
7つ目に挙げた生成AIによる加工画像の拡散は、数年前まではほとんど話題にならなかった新しいタイプのトラブルです。
顔写真を加工アプリやAIツールで合成し、事実と異なる状況を作り出して拡散するケースが国内外で報告されており、今後は学生のSNSトラブルの一角として無視できなくなっていくと考えられます。
なぜ学生はSNSトラブルに巻き込まれやすいのか
学生がSNSトラブルの当事者になりやすい理由は、大きく3つあると考えられます。
理由①:SNS利用者の裾野が広がり、価値観の異なる人同士がぶつかりやすい
SNSには多種多様な価値観の人が集まっているため、自分にとっての「普通」が他人には「非常識」に映ることがあります。
ICT総研が2025年1月に公表した「2024年度SNS利用動向に関する調査」によると、2024年末時点の国内SNS利用者は8,452万人、ネットユーザーに占める利用率は79.0%にのぼります。
これだけ利用者の裾野が広がれば、年代や価値観の異なる人同士がぶつかり合う場面が増えるのは自然な流れです。
同じ調査では、未成年のSNS利用について「15歳未満は利用を制限すべき」という意見がもっとも多く22.9%を占めており、SNSのリスクとしては「個人情報の流出」を挙げた人が60.9%、「アカウントの乗っ取り」を挙げた人が50.8%にのぼりました。
利用者自身がリスクを感じながら使っている実態がうかがえる数字です。
理由②:拡散力と記録が残り続ける性質を理解しきれていない
SNSの「拡散力」と「記録が残り続ける」という性質を、学生自身がまだ十分に理解できていないことも大きな要因です。
一度投稿した内容は、自分が削除したつもりでも、スクリーンショットなどの形で残り続けます。これは俗に「デジタルタトゥー」とも呼ばれ、完全に消すことは難しいのが実情です。
理由③:同じ価値観の人が集まりやすく、批判が増幅されやすい
同じ考えを持つ人同士がネット上で集まりやすく、集団で特定の相手を過剰に非難してしまう現象が起きやすいことも見逃せません。
閉じたコミュニティの中で意見が増幅されると、冷静な判断より感情的な批判が優先されやすくなります。
総務省が2025年5月に公表した「令和6年通信利用動向調査」でも、インターネットの利用目的として「SNS(無料通話機能を含む)の利用」が81.9%ともっとも高く、6〜12歳では「動画投稿・共有サイトの利用」がもっとも高い割合を占めるという結果が出ています。
低年齢層の利用が広がっているぶん、リテラシー教育が追いつかない場面が出てきているとも言えそうです。
実際にあった学生のSNS炎上事例
具体的にどんな出来事が炎上につながったのか、実例を見てみましょう。
2023年1月、岐阜県内の回転寿司チェーン店舗で、当時高校生だった少年が湯呑みや醤油差しの注ぎ口を舐める様子などを撮影し、SNSに投稿しました。
動画は瞬く間に拡散され、店舗名や本人の通っていた高校まで特定される事態となりました。少年と保護者は謝罪しましたが、運営会社は偽計業務妨害の疑いで被害届を提出し、その後およそ6,700万円の損害賠償を求めて提訴したと各種報道機関が伝えています。2023年7月に調停が成立したことも、複数の報道で確認できます。
なお、賠償額や調停成立時期といった数字は当時の報道時点のものであり、その後の状況が変わっている可能性もあるため、詳細を知りたい場合は当時の報道記事を検索して確認することをおすすめします。
2019年2月には、コンビニエンスストアの店舗で、アルバイト店員2人が商品のおでんを口に含んで吐き出す動画を投稿し、大きな批判を受けました。この件は当時、複数のニュースサイトやテレビ報道でも取り上げられ、投稿した店員が解雇され、店舗名や学校名までインターネット上で特定される事態になりました。
さらに古いケースでは、2014年6月に大学生のグループが居酒屋で代金を支払わないまま店を離れたとされる出来事があり、当事者の一部が自ら「逃走中」というハッシュタグをつけて投稿したことから発覚しました。
店員がこの投稿を見つけて公表したことで騒動が拡大し、学生が通っていた大学名まで公開され、大学側は当該学生への処分(自宅謹慎)を発表したことが当時報じられています。
これらの事例に共通しているのは、「軽いノリで撮った動画」や「仲間内のつもりだった投稿」が、短時間のうちに個人・学校・店舗まで特定されてしまうという点です。
一度火がつくと、投稿者本人の意図を超えて情報が独り歩きしてしまう。これがSNS炎上の恐ろしさだと言えます。
SNSトラブルが起きたときの相談先はどこ?
もし学生本人や家族がSNSトラブルの当事者になってしまった場合、パニックにならず落ち着いて対応することが大切です。
トラブルの種類によって、頼れる窓口は少しずつ異なります。おおまかな目安を表にまとめました。
| 状況 | 主な相談先 |
|—|—|
| いじめ・誹謗中傷を受けている | 学校の担任、スクールカウンセラー、教育委員会の窓口 |
| ネット・スマホ全般のトラブル(東京都在住・在学) | こたエール(東京都のネット・スマホ相談窓口) |
| 名誉毀損や個人情報の拡散など法的対応が必要 | 弁護士、法務局の人権相談窓口 |
| 詐欺・不正請求・不正ログイン | 消費生活センター、各サービスの公式サポート窓口 |
| 生命に関わる危険を感じる場合 | 警察(緊急時は110番) |
自分や家族が炎上・迷惑投稿の当事者になってしまった場合は、次の順序で対応するのが基本です。
1. 事実関係を落ち着いて確認する(何が問題視されているか、どこまで広がっているか)
2. 投稿の削除やむやみな反論を急がない(かえって批判を煽ることがある)
3. 誠実に事実を認め、謝罪する(言い訳をせず、再発防止策もあわせて伝える)
4. 原因を振り返り、再発防止に努める
いじめや誹謗中傷を受けている側であれば、まずは学校の担任やスクールカウンセラー、教育委員会の相談窓口、東京都在住・在学であれば「こたエール」のような自治体の専用窓口に相談できます。
名誉毀損や個人情報の拡散など法的な対応が必要になりそうなケースでは、早めに弁護士など専門家に相談することも選択肢の一つです。
証拠として、トラブルとなっているやり取りや投稿のスクリーンショットを、日付がわかる状態で保存しておくと、後の相談がスムーズになります。
考察:学生のSNSトラブルをどう防いでいくべきか
ここからは筆者としての見方になります。
筆者はもともと家電量販店のスマホ相談コーナーや社内のITサポート業務で、月に数十件単位でスマホ操作やSNS設定に関する相談を受けてきた経験があります。その中には、子どものSNSトラブルについて保護者から「どう対応すればいいか分からない」と相談されたケースも少なくありませんでした。
そうした現場での実感として感じるのは、学生のSNSトラブルの多くは「悪意」よりも「想像力の不足」から生まれているケースが目立つということです。
迷惑行為の投稿も、その場のノリや「反応がほしい」という軽い気持ちから始まっていることが多く、最初から誰かを傷つけようとしていたわけではないケースが少なくありません。
だからこそ重要なのは、頭ごなしに「SNSは危ないから禁止」と伝えることではなく、投稿する前に「これを見た人・書かれた人がどう感じるか」を一度立ち止まって考える習慣を、家庭や学校で日常的に育てていくことだと筆者は考えます。
また、こたエールの相談件数の内訳を見ても、小学生からの相談が一定の割合を占め続けている点は今後さらに注視すべきポイントだと感じています。
InstagramやX、TikTokは13歳未満の利用が規約上できないものの、実際には保護者名義のアカウントや年齢を偽っての利用が起きているのが現実です。LINEについても18歳未満はID検索ができない仕組みになっていますが、それだけでトラブルを完全に防げるわけではありません。
海外に目を向けると、フランスやオーストラリアなど一部の国・地域では未成年のSNS利用に関して年齢確認を厳格化する法整備の動きが進んでいると報じられています。日本国内でも今後、SNS各社が年齢確認の仕組みを強化していく可能性は十分にあると筆者は見ています。ただし、こうした技術的な対策が進んだとしても、それだけで完全にトラブルを防げるわけではない点には注意が必要です。
個人的には、フィルタリングやペアレンタルコントロールといった技術的な制限はあくまで補助であり、「困ったときにすぐ保護者に相談できる関係性」を普段からつくっておくことのほうが、長い目で見て効果が大きいと考えています。
子どもがルールを破ったことを叱ることに意識が向きすぎると、トラブルが起きても隠してしまい、被害が大きくなってから発覚するというケースが少なくないためです。
さらに、先ほど触れた生成AIによる加工画像の拡散のように、これまでのSNSリテラシー教育ではカバーしきれていない新しいリスクも出てきています。
今後、AIによる不適切コンテンツの検知技術の進化や、SNS各社の年齢確認の厳格化が進むことも予想されますが、それでも「投稿する前に一呼吸置く」という基本的なリテラシーの重要性は変わらないだろう、というのが筆者の見通しです。
まとめ
学生のSNSトラブルは、ネットいじめや誹謗中傷、個人情報の流出、炎上、課金・詐欺、自画撮り被害、乗っ取り・なりすまし、生成AI加工画像の拡散という7パターンに整理でき、文部科学省の調査でもネットいじめの件数は増加傾向にあります。
背景には、SNS利用者の多様化、拡散力への理解不足、そして同じ価値観の人が集まりやすい構造があります。
トラブルが起きた際は、事実確認・誠実な謝罪・再発防止という順序を守ることが被害の拡大を防ぐポイントです。
そして何より、日頃から家庭や学校で「投稿する前に考える」習慣と、困ったときに相談しやすい雰囲気をつくっておくことが、学生をSNSトラブルから守る一番の近道だと言えるでしょう。
よくある質問
SNSトラブルの相談が多い年代は?
東京都「こたエール」の令和5年度相談実績では、中学生からの相談が386件(44%)でもっとも多く、次いで高校生244件(28%)、小学生210件(24%)という結果でした。学校段階では中学生が中心ですが、小学生からの相談も一定数あります。
学生がSNSで炎上した場合、投稿を消せば大丈夫ですか?
投稿を削除しても、すでにスクリーンショットなどで拡散されている場合が多く、根本的な解決にはなりません。まずは事実関係を落ち着いて確認し、誠実に謝罪したうえで再発防止策を示すことが大切です。
子どものSNS利用で保護者がまず確認すべきことは?
利用しているSNSの年齢制限(多くは13歳以上)を確認したうえで、投稿内容を一緒に見る習慣をつくること、そして位置情報の設定や写真に写り込む個人情報に注意することが基本の確認ポイントです。表示やメニュー名はアプリのバージョンによって変わる場合があるため、最新情報は各公式ヘルプもあわせて確認してください。

