
※イメージ画像です(AIにより生成)
「SNSで誹謗中傷を受けたけれど、どう対応すればいいか分からない」「自分の投稿が誹謗中傷にあたらないか不安」——この記事は、そんな方のために、公的機関の情報を整理したものです。
結論から言うと、SNSでの誹謗中傷は、事実を示した場合は名誉毀損罪、事実を示さずに公然と侮辱した場合は侮辱罪に問われる可能性があります。法務省の公開情報によると、侮辱罪の法定刑は、2022年(令和4年)7月7日から、「拘留又は科料」から「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に引き上げられました。また、匿名の投稿でも、法律に基づいて、投稿者の情報の開示を求める手続があります。被害を受けたときは、投稿のURLや日時を保存し、無料で利用できる公的な窓口に相談するのが基本です。
この記事でわかること
- 名誉毀損罪と侮辱罪の違い、2022年の法定刑の引上げ
- 「批判」と「侮辱」の関係(正当な表現行為)
- 匿名の投稿者を特定するための仕組みと、2025年の法改正
- 被害を受けたときの手順(証拠の残し方・削除依頼・相談窓口)
- 子ども向けの相談窓口と、2026年1月の文部科学省の通知
- 公式情報で確認できなかったこと
名誉毀損罪と侮辱罪
法務省「侮辱罪の法定刑の引上げ Q&A」(令和4年6月)には、次のように書かれています。
| 罪名 | 成立の要件 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 名誉毀損罪(刑法230条) | 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した | 3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金 |
| 侮辱罪(刑法231条) | 事実を摘示せずに、公然と人を侮辱した(不特定又は多数の人が認識できる状態で、他人に対する軽蔑の表示を行う) | 1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料(2022年7月7日施行) |
2022年の法定刑の引上げで変わったこと(法務省)
- 侮辱罪の法定刑が「拘留又は科料」から、上記の内容に引き上げられた(令和4年法律第67号)
- 公訴時効期間が、1年から3年になった
- 教唆犯・幇助犯を処罰できるようになった
- 「侮辱罪が成立する範囲」は変わらない。これまで処罰できなかった行為が、新たに処罰できるようになったわけではない
「批判」との関係(法務省)
法務省のQ&Aには、公正な論評といった正当な表現行為は、仮に相手の社会的評価を低下させる内容であっても、刑法35条の正当行為として処罰されない。このことは、改正後も変わらないと書かれています。
つまり、批判や意見の表明のすべてが、侮辱罪になるわけではありません。ただし、個別の事案で成立するかどうかは、法と証拠にもとづいて、最終的には裁判所が判断すると書かれています。
「拡散」について
法務省のページには、リポスト(拡散)が罪に問われるかについての記述は、今回確認した範囲では確認できませんでした。文部科学省の通知には、匿名性が高いSNS等におけるエスカレートした投稿・拡散は、誹謗中傷などとして新たな人権侵害を生むことにつながるため、決して許されないと書かれています。
匿名の投稿者を特定する仕組み
違法・有害情報相談センターと総務省の公開情報には、次のように書かれています。
法律の名前と、2つの改正
| 施行日 | 内容 |
|---|---|
| 2022年10月1日 | 「改正プロバイダ責任制限法」が施行され、SNS等で誹謗中傷した者の情報開示の手続が、簡易・迅速になる(違法・有害情報相談センター) |
| 2025年4月1日 | 法律名が「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(情報流通プラットフォーム対処法)に変更。大規模なプラットフォーム事業者に、削除対応の迅速化と運用状況の透明化に係る措置が義務付けられる(違法・有害情報相談センター) |
つまり、以前の「プロバイダ責任制限法」と、現在の「情報流通プラットフォーム対処法」は、同じ法律です(総務省の資料にも、「情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)」と書かれています)。
法律の3つの柱(総務省の資料)
総務省の概要資料には、この法律について、次のように書かれています。
- プラットフォーム事業者等の免責要件の明確化
- 発信者情報の開示:権利侵害情報の発信者を特定して損害賠償請求等を行うことができるよう、発信者情報開示請求権を規定(第5条)。元来2回の手続を要する発信者情報の開示を、一つの手続で行うことを可能とする裁判手続(非訟事件手続)を規定(第8条〜)
- 大規模なプラットフォーム事業者等の義務:削除申出窓口の整備・公表(第22条)、削除申出への対応体制の整備(第24条)、削除申出に対する判断・通知(第25条)、削除基準の策定・公表(第26条)、削除した場合の発信者への通知(第27条)、運用状況の公表(第28条)
また、削除した場合の発信者に対する責任について、権利が不当に侵害されていると信じるに足る相当の理由があるとき、または、発信者に削除に同意するか照会したが7日以内に反論がないときは、事業者は免責される(第3条第2項)とも書かれています。
費用や期間は?
手続にかかる費用や期間の具体的な金額・目安は、今回確認した公的機関の資料の範囲では、確認できませんでした。事案によって異なるため、弁護士や法テラスなどで相談する際に、見積もりを確認してください(セーファーインターネット協会のページには、手続が難しい場合は、弁護士に依頼する、弁護士に心当たりがなければ法テラスを利用する、という案内があります)。
被害を受けたときの手順
1. 証拠を残す
セーファーインターネット協会(SIA)の誹謗中傷ホットラインのページには、法的手続(発信者情報の開示請求や損害賠償請求)をする場合は、証拠保全等の対策が必要となる場合があるとして、次の記録をすすめています。
- 該当の投稿のスクリーンショット
- 該当の投稿の投稿日時
- 該当の投稿のURL
また、発信者情報開示請求を行う場合は、投稿の削除に伴い、投稿した人を特定するIPアドレス情報も一緒に削除されてしまうサイトもあるため、削除要請を行う前に、念のため、掲載サイトに対するログの保全要請を行うことも検討するよう書かれています。
2. SNSの通報・削除申出の機能を使う
各SNSの「通報」「報告」などの機能から、削除を申し出ます(操作は、サービスによって異なります)。大規模なプラットフォーム事業者には、削除申出窓口の整備・公表などの義務があります(上記)。
3. 相談窓口を使う
公的機関や協会の案内には、次の窓口があります。
| 窓口 | 内容(公開情報) |
|---|---|
| 違法・有害情報相談センター(総務省委託事業) | ネット上の誹謗中傷の削除の方法、書き込んだ相手の特定などについて、適切に対応するためのアドバイスや関連の情報提供を行う。相談は無料。「発信者情報開示請求書」や「送信防止措置依頼書」が来て対応が分からない場合も相談できる |
| 誹謗中傷ホットライン(セーファーインターネット協会) | ネット上の誹謗中傷に対して、掲載されているサイトに、利用規約等に沿った削除等の対応を促す通知を行う。無料。受け付けは、原則として本人(児童の場合は保護者・学校関係者)。実際に削除されるかは相手のサイト次第で、個別の対応結果の連絡はしていない |
| 法務省の人権擁護機関(法務局) | 「みんなの人権110番」0570-003-110(平日8:30〜17:15)。インターネット人権相談受付窓口もある |
| 警察 | 住所や学校を特定された、誹謗中傷を繰り返し受けているなど、身の危険を感じる場合は、最寄りの警察署への相談も検討する(SIAのページ)。警察相談専用電話は「#9110」 |
子ども向けの相談窓口
文部科学省の通知(資料3「こども向け相談窓口一覧(暴力行為・いじめ関連)」、令和8年1月現在)には、次の窓口が書かれています。
- 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省):0120-0-78310(24時間年中無休、通話料無料)。電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関につながる。子どものほか、保護者などからの相談にも応じる
- こどもの人権110番(法務省):0120-007-110(平日8:30〜17:15、通話料無料)。最寄りの法務局につながる
- チャット人権相談(LINEじんけん相談、こどもの人権SOSチャット):LINEのアカウント名「法務局LINEじんけん相談」(平日8:30〜17:15)
- こどもの人権SOS-eメール(インターネット人権相談)
2026年1月30日の文部科学省の通知
文部科学省は、令和8年(2026年)1月30日付けで、初等中等教育局長名の通知「SNS上における暴力行為等の動画の投稿・拡散を受けた緊急の対応等について」(7文科初第2109号)を発出しています。
通知が出された背景(通知の記述)
通知には、児童生徒間の暴力行為等の動画がSNS上に投稿・拡散された複数の事案が報道されていること、児童生徒の暴力行為やいじめは決して許されないこと、SNS等におけるエスカレートした投稿・拡散が、誹謗中傷など新たな人権侵害を生むおそれがあることが書かれています。令和8年1月14日に緊急の教育長会議、1月16日にいじめ防止対策に関する関係省庁連絡会議が開催されたことも書かれています。
通知が求めた主な内容(通知の記述)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 1. 環境の整備 | 令和7年度中に、児童生徒へのアンケート調査、1人1台端末を活用した心の健康観察、学級担任やスクールカウンセラー等による面談などで、見過ごされている暴力行為やいじめがないか、改めて確認する。暴力行為やいじめは決して許されず、事案によって暴行罪や傷害罪等の犯罪行為に該当し得ることを改めて指導する |
| 2. 確認された事案への対応 | 被害児童生徒の安全確保と心身のケアを最優先にする。加害児童生徒には、厳正な指導や、学校教育法に基づく懲戒・出席停止等を含め、毅然とした対応を行う |
| 3. SNS等への対応 | 警察等の関係機関と連携して対応する。SNS等における悪質な投稿は、内容によっては名誉毀損罪や侮辱罪等の刑罰の対象となり得ることから、令和7年度中に、情報モラル教育を改めて実施する |
| 4. 報告 | SNS等で、現に在籍している児童生徒に係る暴力行為やいじめの動画を確認した場合は、文部科学省初等中等教育局児童生徒課に報告する |
通知の文書番号は「7文科初第2109号」です(令和7年度の番号)。
公式情報で確認できなかったこと
- 発信者情報開示請求にかかる費用・期間の公的な目安
- リポスト(拡散)だけで、侮辱罪や名誉毀損罪が成立するかどうか
- 各SNSの、通報・削除申出の具体的な操作手順と、対応にかかる期間
- 個別の投稿が、侮辱罪・名誉毀損罪にあたるかどうか(裁判所が判断します)
よくある質問(FAQ)
Q1. SNSで誹謗中傷を受けたら、まず何をすればいいですか?
投稿のスクリーンショット、投稿日時、URLを保存します(セーファーインターネット協会)。そのうえで、SNSの通報機能や、違法・有害情報相談センター(無料)などへ相談します。
Q2. 匿名アカウントの投稿者を、特定できますか?
情報流通プラットフォーム対処法に、発信者情報開示請求権(第5条)と、一つの手続で行える裁判手続(第8条〜)が定められています。特定できるかどうかは、事案によって異なるため、弁護士などにご相談ください。
Q3. 有名人への悪口なら、問題ありませんか?
法務省のQ&Aには、公正な論評などの正当な表現行為は処罰されないと書かれています。一方で、相手に対する軽蔑の表示を、公然と行えば、侮辱罪の要件にあたり得ます。相手が有名かどうかで、一律に決まるものではありません(個別の事案は、裁判所が判断します)。
Q4. 子どもが被害にあった・加害に関わってしまったときは?
24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)や、こどもの人権110番(0120-007-110)などが案内されています(文部科学省の通知の資料)。学校の対応は、通知にもとづき、各学校で行われます。
Q5. 命や身体の危険を感じるときは?
住所や学校を特定された、誹謗中傷を繰り返し受けているなど、身の危険を感じる場合は、最寄りの警察署への相談を検討します(SIAのページ)。緊急のときは110番です。
まとめ
- 侮辱罪の法定刑は、2022年7月7日から引き上げられ、公訴時効期間は3年になった。成立する範囲は変わらない(法務省)
- 正当な表現行為(公正な論評など)は、処罰されない。個別の判断は、裁判所が行う
- 法律名は、2025年4月1日から「情報流通プラットフォーム対処法」。発信者情報の開示を、一つの手続で行える裁判手続がある(総務省)
- 被害を受けたら、投稿のURL・日時・スクリーンショットを保存し、無料の公的な窓口に相談する
- 2026年1月30日の文部科学省の通知の文書番号は「7文科初第2109号」
参考にした公的情報(2026年10月15日確認)
- 法務省「侮辱罪の法定刑の引上げ Q&A」(令和4年6月):https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00194.html
- 総務省「情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)」概要:https://www.soumu.go.jp/main_content/001012037.pdf
- 違法・有害情報相談センター(総務省委託事業):https://ihaho.jp/
- セーファーインターネット協会「ネットの誹謗中傷(誹謗中傷ホットライン)」:https://www.saferinternet.or.jp/bullying/
- 文部科学省「SNS上における暴力行為等の動画の投稿・拡散を受けた緊急の対応等について(令和8年1月30日付け初等中等教育局長通知)」:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1414737_00028.htm

